C3と呼ばれる中等度から重度のむし歯は、むし歯が深くなり、病変は歯髄にまでおよんでいます。
ズキズキと強い痛みを感じる時もあります。
痛みは最初、熱いものがしみます。C2の場合に比べ、痛みが続くのが特徴で、口に何も含んでいなくても痛むこともあります。
さらに放置しておくとむし歯菌が歯髄をおかし、歯髄が死んでしまいます。こうなるとやがて痛みがなくなります。
これはつまり、歯髄が死にかけて痛みがなくなったか、完全に死んだということです。
一方で、噛むと痛いことがあります。
これはむし歯菌の感染が歯の根の先から歯を支える組織に広がって、炎症を起こしているためです。
根の先の炎症が起こった部分は「根尖病変」、そして、この病変がある状態を「根尖性歯周炎」といい、痛みだけでなく、歯ぐきが腫れることもあります。
C3のむし歯は歯髄が生きているか、死んでいるかによって、治療法が異なります。
●歯髄が生きている場合
歯髄は生きているものの、回復が難しいため、「抜髄」という処置を行います。いわゆる神経を抜く治療です。
まず、むし歯部分を削ってから歯冠部(歯のかみあわせる部分)を大きく開けて、歯髄を露出させ、歯髄を除去します。その後、神経の入っている根管の形を整えてそこにガッタパーチャという充填剤を詰め、ふたをします。
抜髄後はコンポジットレジンやインレーによる部分的な修復がおこなわれることもありますが、抜髄をする場合は歯を大きく削らなければならないことが多く、また、神経を抜いた歯は、将来的に歯がもろくなるため、基本的には「クラウン」というかぶせ物が必要です。
●歯髄が死んでいる場合
歯髄が死んでいる場合は歯の根の奥にまで感染が広がっているため、ただ、神経を抜くだけの処置では感染巣が残り、そこから、再び、むし歯菌の増殖が起こってしまいます。
このため、歯髄の残骸を取り除き、内部をきれいにする「根の治療」。正確には「感染根管治療」が行なわれます。
この治療では歯髄が侵食され、残骸だけが残り、ボロボロになっています。まずはこの歯髄の残骸を残すことなく、取りださなければなりません。そしてその後、根管の中を洗浄、消毒します。
ところが、ボロボロの歯髄の残骸は取り出すのが非常に難しいのです。
さらに、根管は入り口の太いところで1ミリ弱、先のほうは0・1ミリほどしかありません。また、人によって本数や形が違い、枝分かれをしている場合も。そこに器具を入れ、管の形を整えながら清掃するのです。
専用のリーマーと呼ばれる針のような器具を使って行ないますが、難易度が高く、時間もかかります。
この処置は人によっては何カ月もかかる場合があります。
処置の終了後は充填剤を詰めて、クラウンなどで修復して終了となりますが、熟練した専門の歯科医師がやっても病巣が残ってしまうことがあり、完璧にはできないことがわかっています(成功率70~80%)。
その場合、何年かたって、根の先に炎症が起こり、「根尖病変」が起こることがあります。また、根尖病変は治療後にどこかの歯のすき間から細菌が入った場合にも発生します。
このような場合、再度、根管治療が実施されますが、再治療は初回に比べ困難で成功率は50~60%程度といわれます。これで痛みがよくならない場合は歯を抜かなければならない場合も少なくありません。
C3のむし歯は神経近くまで進んでいるので、一般的な虫歯を削る治療では、神経を抜く治療になってしまいます。
しかし、神経が生きていれば、ドックベストセメントによる殺菌治療により、むし歯を削らないで、むし歯菌を死滅させることができるため、神経を抜かなくて治療できる場合が少なくありません。
ドックベストセメント治療は、むし歯の殺菌と再石灰化に時間り、最長だと虫歯が治るのに、1年程度かかる場合もあります。
しかし、最近は殺菌効果の高いプラズマレーザーというレーザーをあらかじめ、むし歯に照射することで殺菌をすませてから、ドックベストセメントを塗る治療が多くなっており、その場合、最短だとむし歯はその日のうちに治ってしまいます。