オゾンは塩素の7倍といわれる強力な殺菌作用があります。
このオゾンの高い殺菌力を利用して、歯を削らないで、むし歯の殺菌を行う治療がヒールオゾン治療なのです。
なお、この治療はすでにドイツを中心にヨーロッパ諸国やアメリカの歯科医院で広く行われています。
ヒールオゾンを使った歯科治療については、海外を中心にさまざまな研究が行なわれ、その効果が確認されています。
最も有効であったという報告ではヒールオゾン照射で99%のむし歯菌が殺菌されたという結果が得られています。
この結果をふまえれば、治療効果という点で、従来の削る治療となんら遜色はありません。
また、むし歯治療に対する患者へのアンケート調査(欧米)では、歯を削ることに対して83%が不安を感じるという結果が出ました。
そこでこのうちむし歯治療を希望する人にヒールオゾン治療を実施したところ、全員が「治療に不安がなかった」と答え、「新しくむし歯ができた場合は再び、オゾン治療を選ぶ」と答えています。
治療は非常にシンプルで、オゾン発生器につながるハンドピース(口の中に入れる治療器具の手前の部分)についたキャップをむし歯のある歯にかぶせます。
「オゾンには毒があるのでは」と心配する人がいますが、そのようなことはありません。
天然のオゾンは殺菌効果の反面、毒も強いですが、歯科治療で使われるオゾンにはそのような心配はなく、それでも安全を確保するために、法律に従って、キャップを使い、密閉状態(真空状態)で噴射をしています。
この状態で40~60秒間、オゾンを照射したらむし歯治療は終了です。
ある男性は小さい頃に受けたむし歯治療がトラウマになり、「エアタービンとドリルの音がしない治療を」とさまざまな歯科医院を探し、当院にやってきました。
「オゾンガスを噴射するだけでむし歯がよくなるんですか?」と最初は半信半疑でしたが、「このままむし歯を放置しておくのは不安です」と治療を希望されました。
数日後、治療のために改めて来院され、意を決して治療椅子に座りましたが、あっけなく治療が終わったということで、驚きとともに、笑顔になったのが印象的でした。
歯を削らない虫歯治療、ヒールオゾンは下記のような適応症があります。
小さな子どものむし歯治療に対して、ヒールオゾン治療は非常にいいと思います。
子どもはタービンやドリルの音を怖がり、口をなかなか開けてくれません。
「今日は(治療は)無理ですね」とお手上げになってしまう歯科医師も珍しくないからです。
しかし、ヒールオゾン治療では、このような心配はありません。
削らずにオゾンを40~60秒照射するだけだからです。
当然、泣くようなこともありません。泣き叫ぶお子さんを抑えつけて治療をするのは歯科医師もできれば避けたいことです。
そうした意味で、ヒールオゾン治療は患者さんと歯科医師の双方にメリットがあります。
また、子どものむし歯治療には局所麻酔が使われることも多いです。しかし、ヒールオゾン治療では麻酔の必要はありません。
麻酔による事故や副作用を避けられるという点で、親御さんにとっても安心かと思います。
詰め物やかぶせ物をした歯はむし歯になりやすいという特徴があります。
しかも、健康な歯と違って、表面がむし歯になるわけではありません。歯ブラシが届かない、かぶせものと歯の間、といった見えないところにはむし歯が入り込むので、気づかないうちにむし歯が発生、進行し、痛みだしてから慌てて歯科医院を受診することが珍しくないのです。
これを知ってしまったら……。なんとかしたいと思いますよね。もちろん、3カ月に1回は定期検診に行く、というようにして、むし歯を歯科医師に早期に見つけてもらう手もあります。しかし、見つかるまで手をこまねいているのも嫌ですね。
このような歯をむし歯にさせないための対策として、ヒールオゾン治療はお勧めです。オゾンを当てた歯は再石灰化がうながされやすく、歯を強くする作用があることがわかっているからです。
具体的には詰め物やかぶせ物をした歯ごと、ヒールオゾンで殺菌します。
ヒールオゾンはガス、つまり気体なので、細かい隙間にも入り込み、むし歯菌を殺菌してくれるのです。
また、詰め物やかぶせ物をしている歯がたくさんあって全体の歯をいっぺんにオゾン治療したい場合には専用の歯全体にかぶせるマウスピースで上下すべての歯を覆う治療が向いています。
ヒールオゾン治療は歯周病菌も殺菌するので、むし歯や歯周病になりやすい人にはこの処置を定期的に行うといいでしょう。
ヒールオゾン治療はインプラント周囲炎の予防や矯正中の歯のむし歯予防にも役立ちます。
インプラント周囲炎とはインプラントの歯に起こった歯周病のようなものです。
インプラントと歯ぐきの境目は普通の歯に比べ、歯垢(プラーク)がつきやすく、歯みがきだけではなかなか汚れが取れません。この結果、歯周病菌などの細菌が歯周ポケットの中で増殖し、歯肉が腫れてしまうことがあるのです。
インプラントは人口の歯ですから、それ自体は菌には侵されません。
しかし、インプラントが打ち込んである土台は患者さんの体の一部であり、歯槽骨という骨なのです。
このため、インプラント周囲炎が進むとこの歯槽骨が溶け、最終段階ではせっかく入れたインプラントを取り除かないといけなくなってしまうことがあるのです。
(世界のデータではインプラントを入れた人の約20%にインプラント周囲炎が発症するという報告があります)。
ヒールオゾン治療を行なうとインプラント周囲炎の発症リスクを減らすことができます。
また、矯正治療中は口の中に針金や多くの矯正歯科装置が入るので、歯みがきが難しく、「むし歯との戦い」といわれてきました。定期的に矯正器具をはずし、クリーニングをして予防対策としますが、それでもむし歯はできやすく、「矯正治療をするなら、むし歯になるのは仕方がない」という歯科医師もいます。
このむし歯対策にもヒールオゾン治療が有効です。
さらに現在、ヒールオゾンは神経まで達するようなむし歯に対しても使われています。
神経を取り除いた後の管(根管)は消毒を徹底しないとむし歯菌が残ってしまい、数年後にひどい膿をともなう炎症が起こることがあります。
この消毒を手作業でやっていくのは歯科医師でも骨がおれるのですが、ヒールオゾンを使えば気体のガスが根管のすみずみまで消毒をしてくれるので、安心です。